コンヴォイのことを知らないでイギリスのフェスティバルに参加することは不可能に近いだろう。別にコンヴォイがフェスティバルを始めたわけでないし、コンヴォイがなかったらフェスティバルが成り立たないわけでもないけれども、やっぱりそのつながりが強い。
コンヴォイ正式名称はザ・ピース・コンヴォイ。しかしマスコミではヒッピー・コンヴォイと名付けることが多い。現代のジプシーという人もいる。確かにヒッピーにも、ジプシーにも似ているところはある。形といえば、何千人の人がボロボロのバスやトラックに乗って、放浪している。一つのまとまった団体ではないが、フェスティバルにはコンヴォイの多くのメンバーがいつも来ていて、コンヴォイ専用のエリアも大体用意してある。そのエリアに行くと、先ず目に入るのは落書きや絵の沢山書いてあるバスだ。カムフラージ・ネットの掛かっているバスもある。バスのそばに手工芸品や本、手作り料理、古道具などを売っている人がいる。格好は必ずといっていい位汚れている。でもそれは自然であって、気持ち悪い感じが全然しない。むしろ清潔な格好をしている人を見ると、階級意識が働いて「上流階級だ。敵だ。なんで清潔にしていなければ人間扱いされないのかよ。大体表面がキレイであればあるほど中身の方が欠けている。我々金のない奴はああなりたいとも思わない。汚れていれば何があっても気にならないから、気軽に生きることができる。」と考える。髪形は長髪、モヒカン、ドレッドロック。服を着ている人は軍服風が多いが、別に軍隊が好きなわけではなくて、実際に警察から隠れる時に必要になってくる(バスに掛かっているカムフラージ・ネットも当然その為だ)。それにもしかしたら「自由の戦士」という意識もあるかも知れない。子供の外見は大人と変わらない。天気がいい日は子供も大人も裸になる人がいるが、本人も周りの人もあまり意識しないようだ。そしてもう少しそこにいると、ゴミがないことに気がつく(フェスティバルは普通ゴミの山となる)。さすがにトラベラー(旅している人)は環境を大事にする。
またその本人達と話してみると、とても「解放された」人達だと感じる。それでいて落ち着いている。無理やりに「社会を変えなければいけない」と頑固に説教する人は少ない。それはコンヴォイが皆毎日の生活ですでにオルターナティブ社会を作って、その中に住んでいるからだ。しかし、ヒッピーみたいに現社会を逃げているわけでもない。動物解放や反核、いろんな市民運動に積極的に取り組んでいる。放浪していない時に田舎で無農薬野菜を栽培している人もいる。しかし、オルターナティブで生きているからこそ、いつも警察の圧迫と闘わなければならない。
コンヴォイはどういう理想社会を目指しているかと聞かれても、一言で答えることは難しい。「アナーキー」といったら、「混乱」と勘違いする人が多い。「自由」といったら、「今だって自由じゃないですか?」と聞き返されるだろう。要するに、リーダーがいる限り、皆が自分でやりたいことを決めて、実行することは不可能だ。世界中リーダーがいなくなればいいかというと、今すぐはできっこない。リーダーを求めている人、自分で自分の人生の責任を取らずに何かに従った方が楽だと思っている人がまだ沢山いるからだ。でも自分の個性を活かしたい人も沢山いて、現在の社会において束縛されている。そういう人にもう一つのオルターナティブ社会が必要だ。それがコンヴォイの目的だといえるかも知れない。
だからコンヴォイやパンクのような動きはファッションだと思うのは勘違いだけでなく、侮辱でもあるのだ。日本では流行などに「族」を付ける傾向があるけれども、コンヴォイ=パンクの場合だけは民族的な要素もある気がする。民族衣装や髪形、音楽、お祭り、踊り、なまり、宗教の代わりに主義、習慣、料理…全部ある。ほかの民族と違うのは、血でつながっているのでなく、思想でつながっていることだと思う。
そしてコンヴォイの目指していることを批評しようと思ったら、一つの基準はその環境で生まれ育つ子供達はどうなるのか?しかし話してみると下を巻いて仰天するばかりだ。六歳の児童が自分より(例えば)動物実験に詳しいなんて!私はある日コンヴォイ・キッドがラジオでインタビューされるのを聞いたけれども、それだけで「コンヴォイは理想な社会だ」と痛感せざるをえなかった。コンヴォイの中の一台のバスはトラベラーズ・スクールといって、コンヴォイ・キッドの学校になっている。決まったカリキュラムや校則はないと思うが、結果をいうとコンヴォイの子供が大人と平等の立場を持っているようだ ー 子供に大人っぽい部分があるとしたら、その大人にも子供っぽい部分がある。お互いに学んでいる気がする。
ただし、以上なような説明を読んだ人はコンヴォイに問題点が全くないのかと考えるだろう。私も憧れていながら一つの問題点に気がついた。無政府主義社として国家を認めていないのに、政府から失業者救済金を受けている人も結構いることが矛盾していると思う。自分達でものを作ったり、売ったりする人が多いのに、それだけで食っていけない、あるいは手当をもらった方が楽だという人もいるということはイギリスの現状、いわゆる経済不況のせいだけだとはまだいい切れない。その点についてコンヴォイの意見が聞きたい。
なにしろ、自由、平和、自然というスローガンを口にする人が多いこの日本では、実際にコンヴォイが出来なくてもその自由・平和・自然を実行しているイギリスのコンヴォイから学ぶところが多いのではないだろうか?
城雲図・勉のホームページ (http://www.ozaru.net)