デンマークはヨーロッパの中で解放された地として有名である。例えば、ヨーロッパのほとんどの国に徴兵性があるのに、デンマークは小さいから皆にさせたら数が多すぎる。そうすると、先ずくじ引きで半分に減らす。それでも多いから、軍事に関りたくない人にこういう選択が与えられる ー (1)救急隊で働く、(2)イスラエルのキブツ(共同体)で働く、あるいは(3)第三世界でボランティアとして働く。共同体といえば、日本に八十位ある。イギリスには四十か五十位あるみたい。デンマークの共同体連合に聞いてみたら、はっきり分からないということだった。大体でいいからと急き立てたら「まあ、八千から一万までかな」といわれた。デンマークの全人口が東京やロンドンの半分にも及ばないことを考えたら、あまりの驚きに言葉も出なかった。失業者に対する態度も文句のいいようを許さない ー 公共施設は大抵無料か割引制であって、服がなかったらただでもらえるなど、仕事がなくても仕事を見つけた人より差別しないように努力している。勿論、その反面に税金はものすごく高い。仕事を持っている人は収入の最低51%を払わなければならないし、一番ひどい場合にはある歌手が110%も取られた話が有名。
こういう状況の中でクリスティアニアの存在を理解することが可能になってくる。ほかの国では多分考えられないが、デンマークの首都コペンハーゲンのど真ん中に独立した無政府主義国家がある。クリスティアニアの正門を出る時に看板に書いてある「ここよりECに入ります」というのは印象的極まり。その歴史に少し触れてみよう。
約二十年前に(ちょうど学生運動やヒッピーの頃)コペンハーゲンにあった基地から軍隊が移動することになった。その次の日に何百人かのヒッピーなどが入ってきて、その地を占拠した。そこで自由な社会を作りたいといったら、政府の方が「面白そうだな。まあ、いいだろう」という感じで実験としてとりあえず3年間の許可を下した。その3年が終わったら、「出て行け」という態度に変わっていたのだけれども、クリスティアニアの人達は折角作り上げてきた解放区をそのまま失うことを拒否した。それ以来国家との争いが続いてきた。血が流れたこともある。2年前に特に厳しい闘いがあって、もうクリスティアニアがなくなったかと思っていた。だから夏にコペンハーゲンに行った時に、タクシーの運転手に聞いてみた、本当につぶされたかって。「クリスティアニアがなくなる?まさか!クリスティアニアがなくなったら、デンマーク人は100%怒るんだよ。革命が起きるかもしれない。いや、皆まだ元気で頑張っているよ。」
今クリスティアニアに住んでいる人が二千人位いる。場所は結構広くて、川も流れている。そこに住みたい人はほかの人の許可を得れば、空いている場所に自分の家を建てる。基地の建物も当然残っているが、もう全部使われている。中で散歩してみると、ドーム・ハウス、ピラミッド、色々立っている。落書きも豊富にある ー 無政府主義の
やスクオッター(占拠者運動)の
、あるいはクリスティアニアのシンボルになっている三つの丸。その三つの丸の主な意味は二つある。デンマークで画龍点睛のことをiの上の点という。Christiania という名前にそういう点が三つもある。(ところで、クリスティアニアという名称がキリスト教とは関係ない、ただの地名である)。そしてクリスティアニアには法律やルールはない代わりに規則が三つある ー 暴力や武器無し、自動車無し、ヘロインやコカインのハード・ドラッグ無し(ただマリファナは中毒性がなくて、体に悪くないという理由で許されている)。そのほかにルールらしきものといえば、電気や水道を利用している人はそれをきちんと払うこと。後は完全に自由である。北欧の人は裸になることを「はずかしい」とかあまり感じないからクリスティアニアの中でも普段裸で歩いている人が沢山いる。犬を飼っている人も多いが、野良犬や捨て犬も数多く走り回っている。クリスティアニアにいれば皆に親切に扱われるからそこにいつくだろう。
仕事も勿論自分の責任として任されている。クリスティアニアの中にペチカなどの工場があって、菜食レストラン、バー、床屋(どんな髪方にでもしてくれる)、本屋、ヨガ教室もある。クリスティアニアで作られている自転車も変わった形していて、高評で世界中輸出しているみたい。クリスティアニアのラジオ放送局もある。外で働いている人も沢山いる、失業者救済金を受けている人もいる。
政府がクリスティアニアに対していう一つの批判はヘロインなどのハード・ドラッグ常用者がそこへ逃げ込むことである。確かにそういう問題を抱いている人にしてみれば、自由社会であるクリスティアニアは魅力的であろう。クリスティアニアでハード・ドラッグが歓迎されないけれども、周りの社会と違って中毒の問題と闘っている人は見捨てられない。家族の一員として皆に愛されているから回復する人が多い。研究者にいわせると、ジャンキーを病院に打ちこむよりクリスティアニア人になってもらった方が治る確率が高いし、全然安い。昔はハード・ドラッグを売りたい人、あるいは暴力的なヘルズ・エインジェルスがよくクリスティアニアを利用していたけれども、その問題が拡大したらクリスティアニアの人が集まって、「もうここに来ないで下さい」と伝えた。それで問題が解消された。犯罪の問題は最初から存在しない。貧乏人同士だから、盗んでもしようがない。
クリスティアニアの周りのコペンハーゲン人はよく日曜日をクリスティアニアで過ごす。昼飯をレストランで食べて、その後バーでビールを飲みながらライブを見る、あるいは川でスキン・ディップ(裸で泳ぐ)することほど楽しいことがあまりない。ただ歓迎されないのは許可なしに勝手にテントを張って泊まってしまう人と、写真を取り捲くる人。クリスティアニアは観光地ではない。商品でもない。クリスティアニアに入る時はクリスティアニア人の生活を尊重しなければならない。真面目に住みたい人やクリスティアニアを勉強したい人ならいいが、面白がって利用する人は当然嫌われる。
このような理想社会を日本でも作れないのかな?コペンハーゲンの真ん中で自然豊の広い基地が普通の人の手に渡ったことを考えたら、東京の真ん中で自然豊の広い皇居があまりにも惜しい…
城雲図・勉のホームページ (http://www.ozaru.net)